13階段の呪いの都市伝説を題材としたショートストーリー

STORY

13階段の呪い

※この物語はフィクションです。

「なあ。今日、何段だった?」

美術室の鍵を返しに行く途中、遥が唐突に言った。

「何が?」

「階段」

私は笑った。

「数えてないよ、そんなの」

「私は数えてる」

遥は真顔だった。

放課後の東棟。

照明は半分落ちている。

廊下の奥から、油絵具の匂いだけが漂ってくる。

「いつも十二段だよ」

遥が言った。

「今日は、十三段だった」

私は何も答えなかった。

ただの数え間違いだと思った。

「見てくる」

私はそう言って、一人で階段室に向かった。

スケッチブックを鞄に入れながら、無意識に段を数える。

一、二、三――

踊り場。

四、五、六。

十二段。

いつも通りだ。

ほっとして、教室に戻ろうとしたとき。

下の階から、足音が聞こえた。

コツ、コツ。

革靴の音。

運動靴じゃない。

「遥?」

返事はない。

コツ、コツ。

止まらない。

近づいてくる。

私は階段の手すりを掴んだ。

下を見る。

誰もいない。

音だけが、そこにある。

コツ、コツ、コツ。

私は数え始めた。

一段。

二段。

足音に合わせて、誰かが上ってくる。

三段。

四段。

踊り場を過ぎる。

五段。

六段。

そのはずだった。

七段目の音が、聞こえなかった。

その代わり。

すぐ後ろで、声がした。

「何段だった?」

振り返る。

遥だった。

「脅かさないでよ」

私は胸を撫で下ろした。

「十二段だったよ、ちゃんと」

遥は、私の顔をじっと見た。

「良かった」

それだけ言って、先に階段を下りていく。

私も後を追った。

一、二、三――

数えながら、下りる。

踊り場。

四、五、六。

十二段。

問題ない。

玄関で靴を履き替えながら、遥が言った。

「実は、先輩から聞いたんだけど」

「何を」

「東棟の階段、十三段目を踏んだ人、いなくなるらしいよ」

「学校辞めたとか、そういうこと?」

「違う」

遥は靴紐を結びながら、こちらを見ずに言った。

「誰の記憶からも、いなくなるんだって」

私は笑おうとした。

でも、うまく笑えなかった。

「じゃあ、先輩は誰から聞いたの」

「……覚えてないって」

玄関を出て、二人で並んで歩いた。

校門を抜けるまで、どちらも何も言わなかった。

その夜。

私は夢を見た。

階段を下りる夢。

一、二、三――

数えるたび、段が増えていく。

十二。

十三。

十四。

止まらない。

目が覚めたとき、時計は午前三時を指していた。

喉が渇いて、リビングに水を取りに行った。

キッチンへの短い廊下。

そこに、段差なんてないはずだった。

けれど。

暗闇の中、足が何かにつまずいた。

転びそうになって、壁に手をついた。

電気をつける。

廊下には、何もない。

見間違いだ。

そう思って、部屋に戻ろうとしたとき。

スマートフォンが鳴った。

遥からのメッセージだった。

「今何段目?」

それだけだった。

返信しようとして、指が止まった。

送信者の名前の横に、既読の文字が浮かぶ。

自分では、まだ開いてもいないのに。

翌朝、教室に遥の姿はなかった。

誰に聞いても、「遥って誰?」と聞き返された。

出席簿にも、その名前はなかった。

机の配置図にも。

卒業アルバムの下書きにも。

ただ、私のスマートフォンの中にだけ。

「今何段目?」

という、既読になったメッセージだけが残っている。

送信者の名前は、今も表示されたままだ。

もし、あなたの学校にも、いつもと違う段数の階段があったら。

数えるのは、やめておいた方がいい。

誰かが、あなたの分を数えているかもしれないから。


この物語のベースとなった13階段の呪いの都市伝説・起源と真相、その起源と真相はこちら。
13階段の呪いの都市伝説・起源と真相|夜の校舎に潜む、もう一段の恐怖

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